創成期(1980年代前半)
日本には戦前から(一説には20世紀初頭、大正期)わいせつな映像メディアとして非合法フィルム=「ブルーフィルム」文化が存在していた。「ブルーフィルム」は、映写機など高価で大きな機材が必要なため、一部の愛好家による金持ちの道楽的な要素が強かったが、小型で個人視聴が可能なビデオデッキの普及は、アンダーグラウンドメディアに革命をもたらし、「ブルーフィルム」はやがて淘汰され消滅していった。しかし、その流通方法、撮影のノウハウは少なからず裏ビデオに影響を与えることとなった。
当時は家電販売店がVHSデッキ拡販のため、「おまけ」としてこっそりとプレゼントしていたこともあったともいわれる[1][2]。1980年代は、初めから裏ビデオとする目的で性交を露骨に映した作品を非合法組織が製作していた。流通していた物の多くは、何度もダビングを繰り返した粗悪品で(もちろん、著作権を主張される可能性がない事を良い事に作られた無断コピー品である)、画質は悪かった。
近年の研究により、自主制作裏ビデオの第1号は「星と虹の詩」と言われている。その後、1982年頃、本格的裏ビデオ「洗濯屋ケンちゃん」(一部の書物には、裏ビデオ第1号を「洗濯屋ケンちゃん」とする説を載せているが間違いである。)が登場すると、「8時だよ全員集合」などゴールデンタイムのバラエティ番組や人気アーチストのPVの中で、タレントが「洗濯屋ケンちゃん」と発言するなど、裏ビデオの存在が公然と語られるようになった。
発展期(1980年代中頃)
「洗濯屋ケンちゃん」登場に前後して、裏ビデオは単なる性交ビデオから、作品展開に共通の流れができ映像作品と呼べる内容に向上してきた。代表的なストーリー展開は、女性登場-入浴-オナニー-男性登場-前戯-性交、というパターンで、性交は最後の5分間だけというものも少なくなかった。現代においては作品の多くの時間が性交シーンに当てられているため、今考えると極端に短く感じられるが、この頃の出演者は専門の俳優ではないので実生活と同じ感覚で性交していたものと見られる。
裏ビデオそのものが珍しかったこの時代には、夫婦やカップルなど男女で観賞することも当たり前に行われていたため、男性のオナニーシーン(勃起から射精まで)を取り入れた作品も珍しくなかった。
また、この頃から、表ビデオ雑誌に公然と裏ビデオ紹介記事が目立ち始めた。裏ビデオ評論家なる者も現れ、鑑賞した裏ビデオに点数をつけて評価したり、購入方法のノウハウなどを雑誌に載せたりした。この情報をもとに裏ビデオを購入したユーザーも少なくなく、裏ならなんでも良い時代から、内容重視の指向に変わった時期でもある。
成長期(1980年代後半)
1980年代後半からは、当初より裏ビデオとして制作された作品の他に、合法アダルトビデオの製作会社から倒産や借金の肩代わりに持って行かれるなどして流出した無修正マスターテープをコピーしたものが加わった。元々は合法アダルトビデオのため出演女優の質が高く鑑賞に堪える半面、擬似性交が大半であったので面白みに欠ける欠点があった。また、素人撮影物が人気を集めたのもこの頃であった。
それまでの裏ビデオは実際の性交を記録したものと言って良く性交や射精、中出しも本当に行っていたが、この時期以降の作品では一般流通の「表モノ」と同様、擬似精液の使用や擬似性交が当たり前となっていった。
1988年秋、昭和天皇が危篤状態になると(翌年1月7日崩御)社会全体が自粛ムードになる中、警察当局はそれを口実に1989年にかけて一斉摘発に乗り出し、自主制作作品は壊滅的な打撃を受けた。以後、前出の合法アダルトビデオの「流出」モノが主流となった。そのため、裏ビデオが本来持つ、後ろめたさやアンダーグラウンドゆえの稚拙さが醸し出す独特の怪しげな雰囲気が損なわれ、裏ビデオから離れていったマニアも少なくない。
成熟期(1990年代後半から2000年頃)
DVDの一般普及に伴いメディアの形態がVHSビデオカセットからDVDに置き換えられていったが、DVDはデジタル録画であるため何回重ねてダビングしても画質が劣化することがなくクリアな画質で作品を視聴できるようになった。コンテンツは「日本人出演の海外作品」とされるものが多くなり、また、これらは一般に「米国在住の日本人向け」とされている場合が多い。しかし、アダルトコンテンツの通信販売サイトが日本語で表示され、日本での代金決済や日本向け発送に対応している等、実質的に日本在住の者に向けてのものとなっている場合も多い(関税法における禁制品の為、DVDの輸入を行った場合には関税で没収・返送される場合や罪に問われる場合がある。しかし、業者側も没収時の再送オプションを備えたりDVD以外の何かに見せかけ発送する等、いたちごっこが続いている)。日本裏業者の商品は日本でのプレスが不可能なため、DVDを装うDVD-Rである。
現在
そして2000年代の現在は、米国など日本国外から直接映像をインターネット配信をする方式へと移行しつつあり、この場合は発信側・受信側ともに日本の法に触れない(取り締まり不可能)日本でも事実上合法となる。これによりディスクメディアを使った裏ビデオ(違法ビデオ)の存在理由が薄れてきている。また、ファイル共有ソフトによって多くの裏ビデオが流通し入手が困難ではなくなっているため、創生期のような限られた人のみがこっそり見られるモノという見方は薄れてきた。なお、インターネット無修正映像は厳密には裏ビデオとは呼ばない。
裏ビデオ